生成AI(以下AI)に次のような質問をし、小学生の感想文を書かせました。
日本の伝統的むかし話「桃太郎」の感想文を、小学校3年生程度の表現力で書いてください。ただし、字数は400字以内でお願いします。
AIの作成した感想文
「桃太郎」というむかし話は、とても楽しいお話でした。
桃太郎は、大きな桃から生まれた子どもで、おじいさんとおばあさんに育てられます。
やさしくて強い桃太郎は、村を困らせる悪い鬼たちをやっつけるために、きびだんごをあげて犬、さる、きじを仲間にします。
この部分が一番おもしろくて、動物たちが力を合わせるところが好きです。
桃太郎たちは鬼ヶ島に行って、鬼を倒し、宝物を村に持ち帰ります。
村の人たちを助けるためにがんばる桃太郎の姿は、とてもかっこいいと思いました。
正しいことをするために友だちと協力することの大切さを教えてくれるお話だと思います。
1 AIの作成した文章とその特徴
今回、AIが作成した文章は266文字でした。字数制限は400字以内というだけでしたので、ボリューム的には少なく、宿題であれば、先生からお叱りを受けていたかも知れません。
「小学生3年生程度の表現力で・・・」と示しましたので、あらすじを追い、「おもしろい」、「好き」という感覚表現、自分の思いを伝える感情表現が文章に書かれていました。
AIの作成した文章を読んで、次のような特徴に気付きました。
「桃太郎」というむかし話は
質問に引きずられ、「むかし話」と言っていますが、小学生であればストレートに「桃太郎」というはずです。
協力することの大切さを教えてくれる
小学3年生で「大切さを教えてくれる」という表現を使う子どもはなかなかいません。ほとんどの子が「協力することは大切だと思いました。」と書くと思います。
2 AI活用の一番の問題点
「AI活動の1番の問題点とは何か?」
それは、先ほど指摘した、「人間との小さな相違点」や「年齢相応ではない表現」ではありません。
そのようなものは、たちまち克服し、昨日の私達の常識をも凌駕することでしょう。
1番の問題点とは、AIだけの力に頼って成し遂げた仕事は、その人の力で成し遂げたものではないことです。
優れた文章をAIに書かせても、その文章を”本人は再現することができない”のです。
学校現場に置き換えると、AIの活用を一歩間違えると、子どもの学びや成長の機会を奪い、子どもが誤ったAIの使い方に陥る危険性もあるのです。
小学校5年生の表現力で「◯◯◯◯物語」の感想文を書いてください。
ただし、文字数は900字以上1000字未満にしてください。
漢字は小学校4年生まで習った漢字を使い、400字あたり1回の誤字を入れてください。
このようにが小学生がAIに尋ねることは、私の取り越し苦労かも知れませんが、私達はAI活用をきちんと子どもたちに指導していかなければなりません。
3 AIの能力を最大限に活用するには
では、どのようにAIの能力を活用したらよいのか?
学校現場に照らし合わせて、その活用方法を考えてみました。
(1)AIからの回答を得るため、子ども自身に自らの国語力を磨かせる
これが子どもにとって最も重要なAI活用だと、私は考えます。
どのような課題を解決するために
どのような状況や条件のもとで
どのような回答を導き出してほしいのか
現在のAIは優れた推測機能が実装されており、子どもの拙い説明にも寄り添った回答をしてくれますが、より精度の高い回答を期待する場合は、自らの国語力を磨くことが最善の方法であると思います。
大人の場合、キーボードを打ちながら文章を考え、推敲することもできますが、子どもの場合は紙に一度、書くことで自らの思考を外に出さねばなりません。
小学生に質問の内容を書かせたり、AIに生成させる画像のイメージスケッチをさせたりすることも重要であると考えます。
(2)AIに子どもの学習成果物を分析させ、発達段階に応じたアドバイスをさせる
「書いてほしい。」、「作ってほしい。」では、子どもは育ちません。
一度、子どもが自分で書いた文章などをAIに分析させ、発達段階に応じたアドバイスをさせることも有効であると、私は考えます。
やがて将来、「感性」という人間の領域までAIが近づくことができれば、絵画や彫刻、音楽の世界でもAIの力を活用することができるかもしれません。
(3)AIを先生にするのではなく、先生を手伝わせる
子どもの素朴な疑問への回答や、文章作成の基本的なアドバイスなど、先生である教師を手伝わせることもAI活用の1つです。
しかし、これは両刃(もろは)の剣の一面も持っていると、私は考えます。
日頃、教師は答えを出さず、子どもに考えさせる機会を与えます。
子どもが疑問をもち、考え、悶々(もんもん)とする時間も大切なのです。
また、この活用方法は教師がAIを「お答えマシーン」として置いておき、自らが楽をするためのものではありません。
AIを先生にするのではなく、先生を手伝わせることで、時間的、精神的な余裕を生み出し、新しい価値あるものを創造するものなのです。
教師の永遠の課題である、子どもの個人差を逆に利用し、問題を解き進める子にはAIによる採点とアドバイスをさせ、教師は進みの遅れた子にガッチリと個別指導を行うことができれば理想的ではないでしょうか。