子どもを大切にする教室

教師の仕事

「人権尊重」

この言葉が大切なことは誰もが知っています。

教師は教室の中でお互いの人権を尊重し合うため「何を」、「どのように」しなければならないのでしょうか?

1 一人一人が大切にされる場面

2 まごころが求められる場面

3 身近なもので子ども自身に考えさせる場面

1 一人一人が大切にされる場面

多くの小中学校教室では、黒板の上に「学級目標」が掲げられています。

「思いやり」、「やさしく」、「進んで」、「たくましく」などの言葉がよく見られます。

その言葉の中には学校の教育目標をはじめ、児童生徒ががんばるためのスローガン、保護者や教師の願いなどが込められています。

次のような光景が学校でよく見られます。

教室でプリント配付物が配られています。

小学校では成長段階に合わせて、列の子の人数で先生が一番前の席の子に配り、順に後ろの子に渡していきます。

欠席した子がいた場合、プリントはどうなるのでしょうか?

私は先ず教師が範を示し、欠席した子のプリントを机にしまうこともよいと考えます。

学級の子たちにも欠席した友だちのプリントは進んで、机にしまってあげることを指導し、子どもが当たり前のようにできるようになった時、掲げられた「思いやり」という目標に近づけたのだと実感します。

もし、欠席した子の机にプリントが置きっ放しになっていたり、机の下に落ちてしまっていたりすれば、一人一人を大切にしているクラスとは決して言えません。

日常よく見られている光景の中でも、「教室の人権」が尊重されているかどうかが試される時があると、私は考えます。

2 まごころが求められる場面

近年、ネットニュース等の普及で新聞を定期購読しないご家庭も増えています。

「全員、お家から新聞紙を持ってきてください。」

とは、現在の状況からは言えません。

しかし、習字の準備(机の上に墨をこぼさないため)や作品入れ(書いた作品をはさみ込んでいきます)を作る際には新聞紙が必要です。

そこで・・・

新聞紙がたくさんあるお家から寄付を募ります。

(新聞をとっていないお家もたくさんあるという説明をした後)

「友だちのために、新聞紙を持ってきてくれる人はいますか?」

そう尋ねると、進んで手をあげてくれる子がたくさん出てきます。

ここで大切なことは、個人間の譲り渡しにしないことです。あくまで、学級に寄付をしてもらい、教師が新聞紙を持ってこられない子全員に配分してあげることが大切です。

新聞紙を持ってきた子は人の役に立つ喜びを感じ、もらった子は善意に感謝します。

この場面で教師が注意すべきことは、子ども同士の間でのゆずり渡しにはしないことです。

あくまで、クラスに寄付してもらい、教師が新聞紙のない子全員に行き渡るようにしてあげましょう。

この時、新聞紙を持ってきてくれた友だちへの感謝の言葉を大切にしましょう。

私は習字を指導する時に、ここを「まごころが求められる場面」と捉え、よくこの方法を使いました。クラスの1日の中には、これ以外にもたくさんの機会があります。

3 身近なもので子ども自身に考えさせる場面

小学生に限らず、中学生でも教師の一方的な話だけで物事の道理を理解させることはできません。

身近なものから子どもが考える場面を見つけ、考えさせることが大切です。

身近なもので子ども自身に考えさせる場面を大切にしてきました。

小学生に対しては、似ている言葉の違いについて考えさせました。

(例)
・「自由」と「好き勝手」

・「にぎやか」と「うるさい」

・「あだ名」と「ニックネーム」

(児童)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(教師)

「自由時間は楽しいね。好き勝手時間ってあるのかな?」

※自由も一定のルールがあるから楽しいのです

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(教師)

「先生はにぎやかなクラスが好きです。うるさいクラスは苦手です。」

※にぎやかな人たちは、人の話を聞こうとする耳をもっています

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(教師)

「あだ名とニックネーム、言われると嫌なのは?」

※ニックネームと思っていても、本人が嫌がる呼び名もあるのです

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

教室の些細ないざこざの中にも子どもを育て、人権感覚を養う機会は十分にあると、私は考えます。

大切なことは上からのお説教ではなく、子どもの話を聞き、一緒に考え、教師が行動に示し、子どもが自ら行動できるよう育てることです。

そして、自分を大切にし、人を大切にできる子どもたちの中に人権感覚が育つものと信じています。

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